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ああ、これがやりたかったのか。
ここ数年、というか前二作のインフレには、どうにも共感できなかった。
たるいリズム、篭った音、面白くないリフ、つまらないソロ、
薄味なメロディにウフンウフン…
旧作の一ファンとしての視点から見れば、アメリカでブレイクしてからの彼らは、
アメリカの都会性に憧れる、ただのおのぼりさん。
全員お揃いのツナギやアンダースのドレッド、ウフンウフン…
そんなにKornやSlipknotになりたいなら、メロデスなんて止めてしまえばいい。
お前らは何がやりたいんだ。
前二作のインフレに対して感じていたのは、紛れもなくそんな感覚。
そんなわけで、新作だよと言われてもあまり期待はしていなかったのだが、
本作を聴いた瞬間、
そういったもどかしさや疑念が氷解していくのが、はっきりと感じられた。
ああ、何だ、これがやりたかったのか。
パチンと音を立てて、パズルのピースがはまる感覚。
カチリと音を立てて、歯車が噛み合う感覚。
結論から言えば、本作はClayman以前のインフレに回帰したものではない。
あくまで前作の延長線上に位置する作品であり、
Clayman以前(あるいはWhoracle)のファンの渇望を、
手放しで埋めてくれるものではありえない。
しかしながら、前二作に足りなかったものが、本作には確実に「ある」のだ。
旧作ファンならば、本作を聴けば自ずと感じられるのではないだろうか。
これは紛れもなくインフレの作品なのだと。